はじめに
「部分矯正」という言葉が市民権を得て、あたり前のように使われるようになって10年余り、部分矯正の先駆者として部分矯正の普及はとてもうれしいことですが、部分矯正において「早い、安い、簡単」という部分だけが独り歩きして、治療レベルにおいて「???」と首をかしげたくなる治療例を目にすることがあります。
症例を選べば、「部分矯正」は素晴らしい治療方法ですが、何でもかんでも「部分矯正」で治療できるわけではありません。
「部分矯正」のデメリットもきちんと把握されたうえで、自分に最適な治療方法を選んでいただければ嬉しく思います。
1、部分矯正のデメリット
〇かみ合わせは治らない
部分矯正(前歯部矯正)は前歯の6本だけを治す矯正です。
一般的に部分矯正ではかみ合わせは良くも悪くも変わりません。
かみ合わせが原因の顎の痛みや体の不調を抱えていて改善を希望されている方は全顎矯正が必要です。
〇歯と歯の間を削る
前歯のデコボコは奥歯の噛み合わせが原因で起きていることがほとんどです。
奥歯から治す全顎矯正であれば、歯列弓(V字型のアーチ)をU字型に広げて整える事で前歯のデコボコを改善できますが、前歯だけの部分矯正では、デコボコの前歯を並べるスペースを確保するために、歯と歯の間のエナメル質を削る必要があります。
歯を削ると聞くと何だか怖い気もしますが、適応症をきちんと選べば、エナメル質をほんの0.3~0.8mm 削る程度で歯の健康への支障はほぼありません。
〇仕上がりに妥協が必要な場合も・・
上記のとおり、部分矯正では歯を削る作業が避けられませんが、歯(エナメル質)はいくらでも削れる訳ではありません!適応症を間違って、必要以上に歯を削ると、歯が小さくなったり、知覚過敏になったりして、虫歯のリスクが高くなります。
元々のデコボコが軽度な人は、少量の削合量でも全顎矯正と遜色ないくらい綺麗に仕上がりますが、デコボコが重度の人の場合は限界まで削っても希望通りの歯並びにならないこともあります。
部分矯正だと最終的にどんな仕上がりになるのかを、治療前にしっかりとカウンセリングを受けて納得してから矯正をスタートする事が重要です!
< 例1 八重歯が治らない >
< 例2 前歯の角度が完全に90度にはならない>
〇Eラインは治らない
Eラインとは、アメリカの矯正歯科医によって発表されたもので、顔を横から見て鼻の先端とあごの先端を結んだラインをEライン(エステティックライン) と呼び、一般的にこのEライン上、あるいは若干内側に唇が位置することが、理想的であるとされました。
Eラインを治すには抜歯矯正や外科手術が必要です。
2、部分矯正が適している人、適していない人
部分矯正が適している人
- 不正咬合による顎関節の痛みや違和感、または不定愁訴(*)がない人
- 気になる部分が前歯だけという人
- 短期間・低価格で治したい人
- 今より綺麗になれば良い人
*不定愁訴とは、、、特定の病気としてまとめられない漠然としたからだの不調の訴え。頭が重い、疲れやすい、食欲がないなど。
部分矯正が適していない人
- しっかり根本から治したい人
- 不正咬合による顎関節の痛みや違和感、または不定愁訴(*)がある人
- 開咬や受け口など骨格に問題がある人
- Eラインや骨格を治したい人
- 前歯のデコボコが重度の人
- 仕上がりの要望が高い人
3、部分矯正の流れ
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部分矯正の治療の流れ
実際の部分矯正の治療はどんな風に進んでいくの?
4、部分矯正の治療例
<32歳 女性>
<34歳 女性>
<29歳 女性>
☆まとめ
部分矯正は「早い、安い、簡単」とかなり魅力的な治療法ですが、みんながみんな希望通りに綺麗に矯正できる訳ではありません。
部分矯正で本当に希望の歯並びになれるのか??
全顎矯正の方が希望の歯並びに近づくのではないか??
妥協するとしたら、どういう点を妥協するのかなど、事前に部分矯正のデメリットをしっかり把握して、仕上がりのイメージを共有することが部分矯正では大切です。
そのためには、たくさん部分症例を経験しているクリニックが安心です。