はじめに
マウスピースによる矯正のインビザラインが急激に普及してきています。
日本では、数年前まで知る人ぞ知る治療方法のような存在だったのが、今では、まず第一希望としてインビザラインでの矯正を希望される人も少なくありません。
市民権を得た感のある「インビザライン」ではありますが、まだまだ知らない人も多いですので、再度、インビザラインについてわかりやすく説明していきましょう。
1、見た目重視の患者さんに最適
マウスピース矯正は画期的な治療方法
ワイヤーを使わない、透明なマウスピースによる矯正治療は、すべての患者さんに適用できるわけではありませんが、見た目の歯並び治療を希望される患者さんにとっては、画期的な治療方法です。
マウスピースで歯を動かす治療方法は、今まで治療できる症例が限られていたため、一般的な矯正治療の方法とは考えられていませんでした。
現在でも、全ての歯科医院で行っているわけではありませんが、米国ではかなり広まっていて、日本でもスタンダードな存在になってくるのも時間の問題ではないでしょうか。
マウスピース矯正のメリット
この治療方法のメリットは、何といっても透明なマウスピースのために、他人から気づかれにくく、快適に治療を進めていくことができることです。
また、食事やブラッシングのときに外すことができるので、口の中を衛生的に保つことができます。
マウスピース矯正のデメリット
一方、デメリットとしては、患者さんがきちんと装着し続けなければ正しく動かないので、患者さんの協力度に治療期間も治療の成功度も大きく左右されます。
取り外しができるために、ついつい装着しない時間が長くなってくると、思うように歯が動かないので、治療期間が長くなってしまいます。
根本的な噛み合わせ治療をするのであれば、針金で奥歯を大きく後方へ動かす従来の矯正治療のほうが優れています。
そして、歯並びの状況によっては、すべての患者さんに適用できるわけではないことが欠点でもあります。
また、患者さんの歯並びの状態によっては、ワイヤーを装着する場合よりも治療期間が長びくこともあります。
2、インビザラインとは
インビザラインとの出会い
15年近く前に当クリニックのスタッフがハワイに行ったとき、ハワイ日系人の歯科医のクリニックを見学させてもらったことがあります。
そのクリニックのスタッフがマウスピースで歯並び治療をしていました。
そこで、アメリカではこのワイヤーを使用しないで歯並びを治す矯正治療が大ブレイクしていることを聞いて、日本との違いにカルチャーショックを受けました。
大人で、矯正はしたいけれども針金をつける矯正には抵抗がある人には、これは願ってもない治療法です。
インビザラインの治療法は、その人の審査用の資料を集め、それからきれいになった状態までの模型をもとにして、コンピュータ-によって歯を少しずつ移動させるためのマウスピースを数十個つくります。
マウスピースのすべてのセットが患者さんに渡されて、順番にそれを装着していけば自動的に歯がきれいに並んでいくというものです。
今現在は、このシステムですべての患者さんが治療できるというわけではありませんが、矯正器具の見た目的な問題で矯正治療をあきらめていた多くの患者さんにとっては、画期的なシステムです。
インビザラインの問題点
米国を中心にして広まっているマウスピースで歯を動かす矯正治療は「インビザライン」という言葉で商標登録されています。
「インビザライン」を開発したアラインテクノロジー社では、この歯を動かすマウスピースのことを「アライナー」と呼んでいます。
この治療方法は、ただ「アライナー」を順次入れるだけで、最終的にはきれいな歯並びになるという考え方ですが、患者さんの「アライナー」の装着状況や歯の動き方には個人差があるので、現実にはドクターのチェックなしに、ただ「アライナー」を入れれば歯並びが勝手にきれいになっていくというわけではありません。
歯が思うように動かなかったり、予期しない方向に動いたり、噛み合わせ的に問題が生じたときに、担当するドクターがその治療のフォローができなければ、患者さんは路頭に迷ってしまうことになります。
こうした問題点があるために、歯科医に十分な矯正知識と経験がないと、この治療方法で完全に歯並びを治すことはできないのです。
3、インビザラインと非抜歯矯正
私のクリニックでインビザラインを自分の治療に取り入れようと考えた一番大きな要因は、インビザラインの歯を抜かずに矯正する考え方と一致したことです。
インビザラインは非抜歯矯正が主流で、セミナーなどでは非抜歯矯正が推奨されています。
そこで、非抜歯矯正専門医院の当クリニックにおいても、インビザラインを取り入れることにしたいきさつがあります。
抜歯矯正においては第一小臼歯を抜くことが前提ですが、抜歯矯正では、Eラインを優先するメリット以外には抜歯矯正によるデメリットの方が大きいので、その治療方法を敬遠してきました。
舌側矯正の多くの症例は、小臼歯を抜歯する矯正が主流になります。(部分矯正は除く)。
一方、インビザラインでは、非抜歯の矯正を推奨しており共感できましたので、治療に取り入れることに抵抗がありませんでした。
4、インビザラインはどういう人に適しているか?
元々、インビザラインは、矯正装置が見えるのが嫌だという人のために開発されました。
見た目的に、成人になってからワイヤー矯正を始めることに抵抗がある方にとっては、画期的な矯正方法でした。
職場によっては、接客などで矯正装置を付けることを禁止している職場もありますので、そういう方々には、矯正装置を使用しない透明なマウスピースでの矯正は、とても喜ばれています。
インビザラインの出現によって、これまで矯正治療を諦めていた方々にも矯正治療が受け入れられるようになってきました。
見た目的にワイヤーを使用したくないという方以外にも、金属アレルギーでワイヤーを使用できないという方にも、インビザラインは適しています。
また、インビザラインでは終わりまでのマウスピースを一挙に作成しますので、来院回数を少なくしたいという方にも適しています。
5、マウスピースで歯をどう動かすのか
マウスピースの保定装置とは
プラスチックの材質で歯を動かすマウスピースの矯正装置は、もともと、矯正治療後の保定装置として使用されることが多くありました。
保定装置とは、矯正治療の終了後に、動かした歯が元のように動いて戻らないようにするために用いられるものでした。
プラスチックの保定装置にはいくつかの材質があり、その中で歯を動かすことにも応用できるものを選んで歯を動かしていきます。
この装置で歯を動かすためには、歯を動かさない部分が重石のような働きをして、動かしたい部分にだけ力が働くように機能するため、すべての歯を同時に動かすことはできません。
動かしたい部分を小分けにしながら、最終的にすべての部分をきれいにするという方法になります。
マウスピース製作の二つの方法
動かすマウスピースの製作には、インビザラインのようにコンピュータ―で作製する方法と歯科技工士が手作業で作成する二つの方法があります。
手作業による作業手順は、最初に歯の模型をつくり、動かしたい部分の歯を切り離して、きれいな歯並びに並べ替えてから、それに合ったマウスピースを作成します。
それを装着して歯を動かし、更に気になる箇所があれば、その部分を治した状態のマウスピースを再度装着するという繰り返しになります。
一方、インビザラインにおける製作方法は、今の歯並びから終了までの動きを3 次元シミュレーションソフトを通じて予測できるので、完成までの数十個のマウスピースを一度に作製できます。
矯正治療で歯を動かす原理は、持続的な力を一方向にかけると、動くスペースさえあればその方向に歯が動くというものです。
マウスピースによる歯の矯正に際しての必須ポイント
マウスピースで歯を動かす場合は、基本的には奥歯を後方に動かせませんので、他の装置で奥歯を動かすか歯を少し前に動かしてスペースをつくるか、歯の隣接面を少し削ってスペースをつくるかして歯並びをきれいにしていくことになります。
マウスピースでの矯正治療の場合、このスペースをつくることが治療の成功の鍵になります。
矯正治療の原則は、動かしたい方向に少しでも長い時間同じ力をかけることが大切ですので、頻繁にマウスピースを取りはずしていると力をかける時間が短くなってしまい、歯の動きが不十分になってしまいます。
マウスピースによる歯の矯正に際しての必須ポイントは、動かす方向へのスペースの確保と、長い時間マウスピースを装着することの2点が大切になります。
6、ワイヤー矯正に比べて、インビザラインのメリット
①透明で目立たない
インビザラインは金属のワイヤーを使用せずに透明なマウスピースを使いますので、他人から気付かれにくいです。
見た目の矯正装置が気になって矯正を諦めていた人にとっては、インビザラインは待ちに待った矯正方法でしょう。
②ブラッシングがしやすく、お口の中を衛生的に保てる
マウスピースは取り外しが可能なので、 ブラッシング時のワイヤーなどの異物感がありません。
矯正をしていても隅々まで歯をきれいにできますので、虫歯や歯周病を回避できます。
③痛みが少ない
インビザラインで動かす歯の量は、コンピューターで0.25ミリと決められています。
動かす量は常に一定の移動量のため、患者様の感じる痛みはワイヤーに比べてかなり減少します。
④ワイヤー矯正のような装置が外れるなどのトラブルが少ない
⑤違和感が少ない
口の中を傷つけることもなく違和感が少ない。
⑥食事が楽
⑦金属アレルギーの方にも対応できる
マウスピース矯正では金属を一切使用しませんので、最近増えてきている金属アレルギーの方も問題なく矯正できます。
⑧矯正後の歯並びを予測・イメージできる
コンピューター解析によるクリンチェックというシステムで、矯正後のでき上がり予測を矯正前に確認することができます。
☆まとめ
いかがでしたでしょうか?
全国的にインビザラインでの治療が年々増えています。
インビザラインを作成しているアメリカのアライン社では、将来的にはすべての矯正治療をインビザラインでできるようにしようと考えられています。
現実にそういう日が来るのかもしれませんが、今現在では、インビザラインを扱うクリニックの技術力の差も大きく、全ての歯科医院でインビザラインが行われているわけではありません。
正しい診断さえできれば「インビザライン」は素晴らしい矯正方法なので、ご興味のある方は、お近くの矯正専門医院で相談してみてください。