はじめに
インビザラインによる矯正治療も一般化してきていますが、まだまだ患者さまからすると知らないことだらけではないかと思います。
そこで、患者さまからよく聞かれる項目をQ&A方式でお答えしていこうと思います。
インビザラインの歴史
Q、インビザラインの治療法は、今どの位広がっているのですか?
Ans、インビザラインは、1997年にアメリカでFDA(米国食品医薬品局)の医療品として認可されました。
その後、ヨーロッパにも広がり、日本でも2006年から治療が開始されました。
認可されてから2017年まで世界で約500万人以上の人々がインビザライン治療を受けています。
アメリカでは、矯正治療を受けている人の10人に1人はインビザラインでの矯正治療を受けていると言われています。
アメリカの調査会社によるアンケート調査によれば、インビザラインの治療を受けた患者の87%がその治療結果に、「非常に」もしくは「極めて」満足しているとの結果が出ています。
☆インビザラインのメリット
①透明で目立たない
インビザラインによる治療では金属のワイヤーは使わずに透明なマウスピースを使いますので、他人からほとんど気付かれることがありません。見た目の矯正装置が気になって矯正を諦めていた人にとっては、インビザラインは待ちに待った矯正方法といえるでしょう。
②ブラッシングがしやすく、お口の中を衛生的に保てる
マウスピースは取り外しができるので、ブラッシングなどのときにワイヤーなどの異物感がありません。矯正中も隅々まで歯をきれいにできますので、虫歯や歯周病をより回避しやすくなります。
③痛みが少ない
インビザラインで動かす歯の量は、コンピューターで〇・二五ミリと決められています。
常に一定の移動量なので患者さまの感じる痛みは、ワイヤーに比べてかなり減少します。
④ワイヤー矯正のような装置が外れるなどのトラブルが少ない
⑤違和感が少ない
口の中を傷つけることもなく違和感が少ない。
⑥食事が楽
⑦金属アレルギーの方にも対応できる
マウスピース矯正では金属を一切使用しませんので、最近増えてきている金属アレルギーの方でも問題なく矯正できます。
⑧矯正後の歯並びを予測・イメージできる
コンピューター解析によるクリンチェックというシステムで、矯正後のでき上がり予測を矯正前に確認することができます。
☆インビザラインと他のマウスピース矯正での種類の比較
現在のマウスピース矯正を大別すると二種類の施術法に分けられます。一つはインビザラインで、もう一つはクリアアライナー、アソアライナーなどです。
簡単に説明しますと、クリアアライナー、アソアライナーなどでは石膏模型を使い歯を動かしたい方向に手作業で動かします。
インビザラインでは、三次元シミュレーションソフトを使って正確な歯の動きを立案し、光造形技術を用いてマウスピース上に再現します。
適応症例の違いとして、インビザラインは、部分的な矯正症例だけでなく奥歯など全体的に動かすマウスピース矯正にも適用できます。
クリアアライナーやアソアライナーは、主に前歯だけを動かす部分矯正に限定して使用されます。
どちらのマウスピースも材質はほぼ同じですが、インビザラインでは一つの歯型から最終的な歯型までをコンピューターで作り、クリアアライナーでは毎回来院ごとに歯型をとって動かします。
治療内容が軽度の場合はクリアアライナーの方が早く終われますが、歯並びの治療が重度な場合には奥歯にも手を付けなければならないため、マウスピース矯正で治療する場合には、奥歯も動かしていけるインビザラインの方が優れています。
治療費を除いた比較では、マウスピースの矯正治療の精度などから考えて、精密な独自の光造形技術を用いたシステムにするインビザラインの方が優れているように感じます。
症例が軽度の治療ならクリアアライナーをお勧めしますが、本格的なマウスピース矯正での治療をご希望の方の場合には、インビザラインの方が優れている場合が多いようです。
当クリニックにおいては、ワイヤー矯正の仕上げにはクリアアライナーを多用し、最初からマウスピースで矯正治療をご希望される方にはインビザラインをお勧めすることが多いです。
インビザラインとクリアアライナーの比較表(当クリニック参考)
項 目 | インビザライン | クリアアライナー (アソアライナー) |
---|---|---|
通院頻度 | 2~3ヵ月に1度 (歯型は初回のみ採取) |
1ヵ月に1度 (歯型は毎回採取) |
マウスピースの交換頻度 | 10日~2週間に1度 | 10日~2週間に1度 |
治療の限界 | 特になし(全顎矯正も可) | 前歯限定の簡単な症例(部分矯正) |
治療費(終りまでの総費用) | 上下の前歯だけの簡単な 症例 50万円~ 全体的なインビザライン 80万円 オプション 10~40万円 |
25~35万円 (上か下かどちらか一方のみ) |
インビザラインの装着時間
Q、インビザラインを寝る時だけ使用しても歯は動きますか?
Ans、同じ方向に力を加えていくことで歯が動き始めるのは、ワイヤー矯正と同じ原理なので、インビザラインにおいてもマウスピースは、ブラッシング以外のほぼ24時間使用していただくことになります。(20時間以上の装着が義務付けられています)
インビザラインを昼間外して、夜だけ装着していますと、夜動いた歯の量が、昼間に戻ってしまい、歯茎の下の歯槽骨に対しても悪影響を与えてしまいます。
インビザラインを選択されたからには、昼間もきちんと装着していただくことが大前提になります。
治療方法
Q、インビザラインの治療で歯を削っても問題ないの?
Ans,当クリニックでは「歯を抜かない矯正」を20年以上行っています。最初の10年間は、歯を一切削らないやり方で矯正をしていました。
その後、アメリカから「インビザライン」というマウスピース矯正が入ってきてからは、エナメル質を0.1~0.5mm削合して矯正を終了しています。
エナメル質の一部を少し削ることで、患者さまも多くのメリットがあることを実感されていらっしゃいます。
Q、インビザラインの使用に際して、エナメル質を少し削るそうですが、歯を削る時は痛いですか?
Ans、エナメル質には神経は通っていませんので、歯を削る際の痛みはありません。
インビザラインで歯を削る場合には、麻酔をしなくても痛くない範囲でエナメル質を削っていきますので、痛みを感じる心配はありません。
Q、エナメル質を削合するメリットは?
Ans,
- 前歯の前突感がより改善される
- 前歯の歯茎の黒い影(ブラックトライアングル)がより改善される
- マウスピースの治療期間が短くなる(歯の動きが早い)場合が多い
などがあります。
特に2のブラックトライアングルの改善にはエナメル質の削合が唯一の方法なので、ブラックトライアングルを気にされる方にはたいへん有効な矯正方法だと思っています。
歯を大切にしてきた患者さまにとっては、歯を削ったり、神経を取ったり、抜いたりすることなどすべてのことが、歯をダメにすることだと感じられている方が少なくありません。
歯を一切削らないで矯正を終えたいと思われる気持ちはとてもよく理解できます。
実際、審美治療で歯を抜いたり歯の神経を取ったり、象牙質まで削る場合には、歯の寿命を短くする可能性が高くなります。
当クリニックでも、以前はエナメル質の一部といえども歯を削ることに抵抗があって「抜かない矯正」を始めた10年間は一切エナメル質を削りませんでした。
インビザラインが登場してから、エナメル質の一部を削る矯正治療を少しずつ行うようになりました。
この中で少しのエナメル質を削るデメリットよりもメリットの方が断然多く、絶対に安全で有効な治療方法であることを体験していますので、今ではほとんどの患者さまにエナメル質削合の治療を勧めています。
こうしたメリットがあっても「エナメル質を一切削りたくない」と患者さまが考えられるならば、当クリニックとしては、以前のようにエナメル質を削らずに治療することはできますが、矯正治療の結果を少しでも良い状態に保つためには、0.1~0.5mmくらいを削ることのメリットの方がデメリットよりもはるかに大きいと感じています。
矯正治療の適正年齢
Q、インビザラインで治療する場合に年齢制限などはありますか?
Ans、インビザラインに限らず、矯正治療には特に年齢制限はありません。
以前は、矯正治療は子どものための治療というイメージがありましたが、今では矯正治療は何歳になっても可能です。
矯正治療においては、歯茎と歯槽骨さえしっかりしていれば、歯を動かして矯正治療終了直後の良い状態をキープしていくことは難しくありません。
ただし、中度以上の歯周病の方は、矯正することは可能ですが、矯正後の状態をキープすることはかなり困難ですので、矯正はあまりお勧めしていません。
当クリニックにおいても、50歳以上、60歳以上の方もたくさん矯正されていますが、矯正装置の見た目が気になって矯正を躊躇されている方にとっては、インビザラインは誰にも気づかれないで矯正をスタートできますので、シニア層にとってはとても好ましい矯正方法ではないかと思います。
痛み、違和感について
Q、インビザラインは痛いですか?
Ans、新しいインビザラインを装着した当初は、しめつけられるような違和感や軽い痛みを感じる方もいらっしゃいますが、普通2,3日で慣れてきます。
一般的には、ワイヤー矯正に比べてインビザラインの方が痛みは断然少ないです。
インビザライン治療で痛みが出にくい理由としては、動かす歯の量が歯根膜の厚みと同じ0.25ミリとコンピュータで計測された量だけの動きになっていることと、マウスピースによってすべての歯が覆われていることがあります。
Q、インビザラインを付けている時、普通に話せますか?
Ans インビザラインの材質の厚みは1ミリ以下で、歯だけを覆い歯茎は覆わないため、矯正前とほとんど同じように話をすることが可能です。
ただ、個人差があるため、初めてインビザラインを装着してからの数日間は、多少違和感を感じる方はまれにいらっしゃいますが、そういう方も、2,3日すれば普通に話せるようになっています。
抜歯について
Q、インビザラインの矯正は抜歯が必要ですか?
Ans、インビザラインの会社の方針としては、歯を抜かないで矯正をすることを推奨していますので、一般的にはインビザラインで矯正する場合も、歯を抜くことはありません。
小臼歯(前歯から4番目の歯)を抜かないで、奥歯を側方に動かしたり、エナメル質の一部を少し削ることで歯を動かすスペースを作っていくので、矯正のために抜歯することはありません(例外的に、出っ歯の改善よりも口元の改善のほうを治したいと患者さまが望まれる場合は、お話し合いのうえ抜歯することはあります)。
治療中の虫歯について
Q、インビザラインの治療中に虫歯が見つかったらどうすればいいのですか?
Ans、基本的には、インビザラインでの矯正前に虫歯の治療を終えておく必要はありますが、たいていの場合には、インビザラインの治療中においても矯正治療に影響が出ない範囲で虫歯の治療を行えますのでご心配いりません。
☆まとめ
いかがでしたでしょうか?
インビザラインもだいぶ日本に定着してきて一般化してきていますが、まだまだクリニックによる治療レベルにも差はありますので、詳細は治療されるクリニックでもご確認の上治療を開始してください。
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